こんにちは、精神科医/コラムニストの岡田夕子です。
今回のコラムでは、「不妊治療とうつ」について取り上げています。
不妊治療とうつ病、一見すると全く関係のない病気同士のように見えますが、実は非常に密接な関係があります。今回は、その辺りを中心に説明をしていきましょう。
不妊治療の過程で抑うつ状態になりやすい
私個人の見解ではありますが、不妊治療をして、抑うつ状態にならなかった人は、「不妊治療を開始してわりと早い段階で子どもを授かった人」ではないかと考えます。比較的不妊治療の初期段階で治療がうまく進んだ結果子どもを授ると、抑うつ状態になるタイミングが物理的に少ないので、うつ状態に陥ることなく治療が終わることもあるでしょう(もちろん、そうではなく深い悩みを持つ方もいらっしゃいます)。
しかし、なかなか子どもを授かれない場合はどうでしょう。
タイミング方を試してみたけれどうまくいかない。
人工授精をしてみたけどうまくいかない。
体外受精をしてみたけどうまくいかない。
顕微受精をしてみたけどうまくいかない。
うまくいかないことが増えると落ち込む回数も多いことが予想できます。
また、「不妊治療を始めると、コミュニケーションの一環でもあったはずの性行為を『義務』と感じるようになってしまった。」「夫が検査に行ってくれず協力を得られない」など、治療回数などとは別に、夫婦関係についてのお悩みもよく耳にします。
さらに、不妊治療をしている人の中には、同世代・同学年で子どもをすでに出産している知り合いが多いという方もいることでしょう。そうした状況においてもストレスを感じることがある中で、お互いの実家から「孫はまだ?」といった声を掛けられると、自分のことをどんどん追い詰めてしまいます。
そうすると、気分が落ち込んだり、なぜか涙が出てしまったり、というような抑うつ症状が出てきます。徐々に、妊娠しない自分・子どもを産んでいない自分が劣っているように感じたり、友人の妊娠報告を素直に祝うことができなくなったりといったことが起きてきます。そうしているうちに、うつ病になってしまうことがあるのです。
抑うつ状態の治療
では、不妊治療をしている人のうつ病の治療は、どのように進めたらよいのでしょうか。ここでは、2種類の治療法を挙げて、それぞれ説明させていただきます。
①不妊治療、継続できる?精神科での治療
まずは、精神科による治療です。
うつ病に対しての標準治療となると、セロトニン再取り込み阻害薬を使ったりするような薬物療法が中心となります。ただ、これは「妊婦に対しての安全性は確認されていない」薬が多く、妊娠してしまったら続けられないということが起きます。継続する場合は、胎児にリスクがあることを承知した上での治療となります。
うつ病に効果のある漢方もありますが、不妊治療を長期化してうつ病に至ってしまった人にとっては、少し効果が薄いです。
②お薬は飲みたくない!カウンセリングによる治療・改善法
次は、カウンセリングによる治療です。
「うつ病だからといって、不妊治療は諦めたくない。」
「いつか来てくれる子どものために、薬を使った治療は受けたくない」
そういう方は、カウンセリングを中心とする改善策を行うといいでしょう。自分の考え方の癖や、どうやって前を向いていったらいいかなど、いろいろお話しする中で改善していくことができます。
ただし、うつ病の治療を止める場合は、医師としっかり相談をしましょう。自己判断で通院を止めることのないようにしてください。
まとめ
今回は、不妊治療中のうつ病の治療、改善法について書かせていただきました。
薬物治療を行う精神科による治療と、薬を使わないカウンセリングによる治療。不妊治療中だからこその選択肢の選び方も見えてきたのではないかと思います。
あなたの苦しい思いが少しでも楽になることを祈っております。
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岡田 夕子 Yuko Okada
精神科医/コラムニスト
医師×YouTuber×Webライターとして、さまざまな分野で才能を発揮!運営するYouTubeチャンネル『精神科医・みずきのこころチャンネル』では、こころの病気・症状、お悩み解決の仕方などを、自分の体験談なども交えながら発信しています。
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