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“介護を受ける心理”について考える

更新日:2020年3月2日


生活のサポートが少しだけ必要な介護から、命の管理を誰かに預けなくてはいけない人など、介護を受ける人の状況は様々です。共通していることは、心身に不自由があることから、サポートが必要である事実です。

介護は受ける側も提供する側もストレスを抱えることが多いです。お互いを思いやる気持ちがあっても些細なことから関係が悪化し、ストレス問題に発展することも。また、それが原因で鬱になったり、暴力行為へと発展したり、注意が必要なケースもしばしば見受けられます。

こういったケースでは、介護を提供する側の視点から問題に焦点が当てられがちです。

しかし、介護を受ける人が何を感じて、何を求めているのかを理解することは提供する側にとっては大事なこととなります。これまで自分で生活してきたけれど、人の助けなしでは不便が伴う。これは人にとってとても辛いことなのです。


今回は、介護を受ける心理について、一緒に考えていきましょう。


“介護を受ける心理”について考える1

■『 介護を提供する人の気持ちを考える』大切さ。どうしたら分かる?


これまで健康で自由だった人が、何らかの理由で不自由を強いられようになると、どのように感じるでしょうか?「〇〇をしたい」という意志があるにもかかわらず、その欲求や目的を達成することができない時、おそらくイライラした気分や歯がゆい気持ちを抱えることでしょう。

ほんのささいな行動もうまくいかない場合は、それを必死で達成しようともがきます。まさに、このもがきが、介護される人の心の声なのです。


今まで当たり前のようにできていたことが、誰かに助けてもらわなければうまくできない。このことは、自尊心や自己肯定感といった人が持つセルフエスティームに 影響を与えます。


アメリカ人心理学者であるアブラハム・マズローは人間の欲求を階層(マズローの欲求のピラミッド)で主張し、精神心理学界で注目されました。心理学では自己価値を描写するときにセルフエスティームという言葉が用いられます。


“介護を受ける心理”について考える_マズローの五段階欲求説

【マズローの欲求のピラミッド】

底辺(生きるために最低限必要なもの):食べ物、呼吸、睡眠などといった生理的欲求

下から2段目:雇用や健康などといった安全欲求

下から3段目:愛や家族を持つといった社会的欲求

下から4段目: 自身や信頼を得るといった承認欲求

頂点: 自己実現欲求、つまり自分の思い描いた人生を達成できた段階


介護を受ける人は、 安全欲求や生理的欲求すら欠けていることがわかります。これはどんなに辛いことでしょうか?自分の思うように話すことができない、動くことができない。仮にこれらが医療機器などによって少しでも補助されたとしても、愛情が受けられなければ、介護を受ける人のセルフエスティームは下がってしまいます

では、どうしたら介護を提供する人の気持ちを感じることができるでしょうか?


“介護を受ける心理”について考える2


■立ち止まり、深呼吸


人は頭の脳を休ませてあげる必要があります。常に何かを考えていると、とても疲れている自分がいることに気づくでしょう。

介護を受ける人も、介護をする人も、自分の心がいっぱいになってしまう前に、深呼吸をして静寂の中で心を落ち着ける時間を持ちましょう


そして、不便に感じていることは相手に伝える。話しづらいと感じたら、メモに書いて自分の気持ちを伝えてみる。一時の感情で発した気持ちは間違った形で受け取られることもあるかもしれませんが、本当に伝えたいことは落ち着いて伝えることで相手の理解を促すことができます。


お互いに、心のモヤモヤを蓄積し続けることはストレスの元です。

介護される人は自分の殻に閉じこもる人も多いように思います。介護を提供する人は、是非、表情や発する言葉、態度から相手の感情を察していきましょう。

これまで見えてこなかった「介護を受ける人の本心」が見えてくるはずです。



 

安藤 麻矢 Maya Ando (コラムニスト)

ライター歴20年。専門分野は社会科学。趣味は動物の短編を書いたりイラストを描いたりすること。同情よりも共感が少なくなっている世の中、小さな手助けが人の心を救えることを信条としている。米国大学にて心理学学位取得、香港の大学にて健康行動学でマスターを取得しており、グローバルな視点と知識をもとにしたコラムを執筆している。LIB Laboratoryでは自身の介護経験を通じて感じることを心理学的な視点を交えてお伝えしている。https://www.liblaboratory.com/andomaya

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