こんにちは、精神科医/コラムニストの岡田夕子です。
今回のコラムでは、「出産と精神疾患の治療の両立」について取り上げています。
継続した治療が必要な精神疾患を抱えている場合、内服をしながらの出産か、一度薬を計画的にやめてからの出産か、考える必要があります。具体的にどのようなことなのか、1つずつ見ていきましょう。
精神疾患を持ちながらの出産
現在、精神疾患を持ちながらの出産はとても増えています。というのも、いい薬がたくさん発売されているということに加え、精神疾患の方の治療・通院の仕方が変わったからです。
昔であれば、精神疾患が見つかると病院に長期間入院し、その中での生活を余儀なくされていました。つまり、人との出会いが少なかったのです。しかし今は、病院から社会へということで、病院と各地域のさまざまな施設が連携を取ってそうした患者さんのサポートをすることができるようになり、患者さんも通院での治療を受けながら地域の中で生活を送ることができるようになりました。そのため、自由に恋愛を楽しむことができるようになったのです。恋愛をするとなると、その後に待っているのは一般的に結婚、出産ですよね。
妊娠出産は一般的に喜ばしいことではあるものの、薬を飲みながらの出産は、不安がたくさんあると思います。そのような方には、以下の情報センターが役に立つはずです。
<妊娠とお薬情報センター>
ぜひ参考になさってみてください。
内服を中断するか、しないか
統合失調症や躁うつ病の人が、妊娠することももちろんあります。その際、薬をやめるかやめないか、というのは難しい問題です。
ただ、“妊婦に対して投与を絶対に行ってはならない薬”というのは限られていて、実際に止めるかどうかの判断は、その時の病状とご本人の意思が大事になってきます。「薬は良くないだろう」と勝手な判断で服薬を止めるのではなく、主治医の先生とよく話し合って決めてください。
また、出産後にいつから薬を再開するか、ということも主治医の先生と話し合っておきましょう。母乳をあげるのか、母乳を止めて薬を飲むのか、ということも大事な問題です。
内服を中断するならカウンセリングがおすすめ
統合失調症の幻覚妄想にも、認知行動療法という心理療法が有効であるとわかっています。躁うつ病でも同様です。
内服を中断するのであれば、内服を中断することに対する不安がある場合はカウンセリングがお勧めです。少しでも症状が出てきた時に有効な心理療法を実施するなど、カウンセリングが果たせる役割は大きいのです。
精神疾患を持つなら不妊治療を受けて計画出産
内服をどうするか、カウンセリングをするか、どの病院で産むか(クリニックレベルでは断られることが多いです)、など、精神疾患の人は妊娠後に考えることが、そうでない人よりも特に多いです。ですので、不妊治療にあたる治療を受けて、計画的に出産するということが個人的にはお勧めです。
精神疾患を持ちながらの不妊治療ならカップルカウンセリング
精神疾患を持ちながらの不妊治療でも、なかなか子供ができないということはよくあることです。その場合は、カップルカウンセリングが大事だと、個人的に思います。
精神疾患があるだけでも不安なのに、不妊治療の期間が長くなるとそれだけストレスが大きくなります。こういったときに、パートナーが本人の苦しみを理解できない、ということはお互いに辛いことで、それだけは避けたいことでしょう。
治療者本人だけのカウンセリングもいいですが、カップルカウンセリングを受けることでお互いの理解にも役立つことを考えると2人でカウンセリングを受けることも有効と言えると考えています。
まとめ
精神疾患を持っている人が妊娠した場合は、内服をやめるかやめないかが問題になる
母乳をあげたいかどうか、それも最初に話し合っておく
不妊治療も含めた計画出産もおすすめ
内服を中止する場合、不妊治療が長くなる場合はカウンセリングが有効
ご理解いただけたでしょうか?
どうか、皆さん希望する出産が叶いますように。。。
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岡田 夕子 Yuko Okada
精神科医/コラムニスト
医師×YouTuber×Webライターとして、さまざまな分野で才能を発揮しています。運営するYouTubeチャンネル『精神科医・みずきのこころチャンネル』では、こころの病気・症状、お悩み解決の仕方などを、自分の体験談なども交えながら発信しています。
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