人は悲しいと涙をながします。怒ると大きな声を上げる人もいます。
感情を目に見える形で表現する(=外へ発散させる)と気持ちがすっきりし、ストレス解消につながるため、心身の健康を保つことにつながります。
ですが、いつも感情をストレートに表現できるとは限りません。
本当は悲しいはずなのに涙が浮かばないこともあれば、どんなに頭にきてもぐっと自分の中に留めることもある、そんな経験をしたことがある方もいることでしょう。その裏側にある心理として、「他の人に迷惑かけたくない」「弱い人間に見られたくない」と、周囲を気にしていることもあれば、過去のいろいろな経験からご自身の感情に鈍感になっていることもあります。
今回は、自分の感情をストレートに表現するための方法の1つとして、アートセラピーについてご紹介をいたします。
■感情が麻痺するのはなぜ?
自分の感情を内に抑え続けると、いつしか心が揺さぶられるような出来事が起きても、感情が麻痺して何も感じることができなくなってしまいます。これは、人間の防衛本能による働きで、不快な記憶を意識の下に隠そうとすることから起きているのです。それだけその出来事があなたにとって「辛いこと」「耐え難いこと」という見方をすることもできます。
■感覚が麻痺していても記憶は消えない
パソコンに保存したデータは、自らの意志で削除をしない限り消えることはありません。デスクトップ上になくても、どこかのフォルダに保存されているのです。
それと同様、人の記憶も見ないふりや気づいていないふりをしていても過去の記憶は消えたわけではないため、何かのきっかけがあると、それら嫌な記憶は思い出されることがあります。
そういった意識されていないネガティブな感情をアート、動物、音楽、演劇など様々なものを介在させることによって感情や内面を表現し、心を癒すセラピーが世界中で日常的に用いられています。
■アートセラピー
アートセラピーには 絵画、彫刻、コラージュ、色つけ、などがあります。何かを創作している時の気持ちを自分で感じることを目的にしています。例えば、音楽を聴きながら紙に心の赴くままに色を付けていったとします。出来上がったものや製作中にセラピストがどのように感じるかなどを尋ねます。
日本でも徐々にアートセラピーが紹介されるようになってきています。
海外でアートセラピストの資格を獲得するには専門のコースを大学院で修了し、数百時間の実習を得てやっと協会から資格が与えられる、専門性の高いセラピーとして認識されています。
アートセラピーはクライエントが自分の心の状態を感じるために行われるもので、セラピストが出来上がったものをみて「なんだか暗い色合いが多いけれど、今のあなたの気持ちを反映していますね」などといった主観を述べるものでありません。
あなたがアートセラピーをする際には、「自分は何を感じてアートセラピーに取り組んでいるか」ということを考えて取り組んでみてくださいね。
今回は、1人で簡単にできるアートセラピーを紹介します。
<用意するもの>
· 白い大きな画用紙(大きければ大きいほど良い)
· クレヨン(一色)
· 緩やかなクラッシック音楽(お好きな曲を選んでください)
<所要時間>
· 5分程度
<手順>
音楽を心地よい音量で流し、両目を閉じて心の思う通りに連続した丸を描き続けます。
5分経ったら目を開けて描き上がったもの見ます。そして描き上がったものを見ながら作画中の気持ちを振り返ります。
ぜひ自分の心の声を、ご自身が描いたアートを通じて聞いてあげてください。
客観的にご自身と向き合うことができ、セルフセラピーになりますよ。
安藤 麻矢 Maya Ando (コラムニスト)
ライター歴20年。専門分野は社会科学。趣味は動物の短編を書いたりイラストを描いたりすること。同情よりも共感が少なくなっている世の中、小さな手助けが人の心を救えることを信条としている。米国大学にて心理学学位取得、香港の大学にて健康行動学でマスターを取得しており、グローバルな視点と知識をもとにしたコラムを執筆している。
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